セニョリータのつぶやき
この冊子(※冊子とは『党と革命の政治・経済・社会の指針』)を庭でしみじみと読んでいた知人のおじさんに「どうなんですかね?これからキューバは何か変わるんでしょうかね?」と聞いたら、
「変えるとはいうけど、いつ何をやるか、はっきり書いてない」とか言ってました。それと、私がよくお釣りをごまかされて怒ってることに言及して
「君が困ってるような問題について何も書いてない。まずは泥棒を何とかしないとね」とも。
言わんとすることは、制度をどうするってことより、とりあえず手をつけるべき現状があるのでは?ということらしい。また、党員だという近所のおじさんにもこの指針の感想を伺うと、
「キューバは社会主義を決して捨てない。ベトナムや中国みたいなことには絶対にならない。これにそう書いてある」と、これまた極端な感想でした。本文をナナメ読みしたところでは、まだ2重通貨の統合には言及していないようで、「通貨政策」の項目には、国内通貨の価値を高め安定させて外貨との格差を縮小させる、というところにとどまっているようです。
気になる項目として「無料サービスの縮減」の項では、「無料と助成」の項目に「不必要な無料サービスを廃止して必要なものを供給する」とか書いてある下に「労働者食堂は継続する」ということもさらっと1行書いてありまして、思いやりが感じられます。労働者食堂ってーのは、実態がよくわからないのですが、知人から「職場の食堂で1ペソでランチが食べられる」という話を聞いたことがあります。「ただ、品質が最悪だから、そこでは食べない」と素っ気なく言ってましたが。ペソ対応のカフェテリアで普通に食べると、ピザとかホットドックが5ペソ、コーラかサイダー(瓶入り)5ペソ、合計10ペソ(40円ほど)くらいになります。私も最近、この手のランチでしのいでいます。一般人の生活を見ていると、ペソとCUCがあるうちはなかなか抜本的な改善にはならないのでは?と思いますね。場所にもよるけどカデカ(両替所)に並んでいる人の半分はキューバ人っぽいです。見た目、いかにも生活苦しそうだなーというような人も、ペソを1とか2とか少額のCUCに交換しています(5ペソ=1 CUC)。石けんがリブレタ(配給)から外れたり、食用油が配給ではコップ半分程度で、足りない分はCUCで買うしかないとか、そういう事情で、贅沢するつもりはなくても、どうしてもCUCが必要になっているようです。ちなみに私が現地で愛用しているキューバ製シャンプー、リンスはそれぞれ3.75CUCで、シャンプーセットをペソにしたら190ペソ。労働者の平均月収の半分がフッ飛びます。キューバ人と結婚などしたら「金のかかる嫁」ってことで3日で出されますね(汗)。それにしても妙だと思うのは、そのシャンプー・リンスを作っている工場の労働者も400ペソ程度で働いているはずで、この価格が生産コストに見合っているとは到底思えないわけです。もっと極端なことは身近にもあり、ハバナ大学外国人スペイン語コースは月300 CUCで先生の月給は(他の労働者よりも良いけれど)800ペソです。1クラス5人として考えれば、3000円弱のコストで15万円の収益を上げているわけです。その「見合わない部分」でキューバが誇る無料の医療・教育体制を支えているということでしょうけれど、「それにしても、もうちょっと納得できる数字にならないもんかなー」と思ってしまいます。ペソを貯めてカデカに並んで、手にしたCUCで石鹸やトイレットペーパーを買うというのは、年金250ペソの老人などからしたらやはり大変だと思います。
基本はキューバ・ラブの私だけれど「何とかしてやって」と言いたくなります。
客観的に考えると、すべてのペソ商品の価格と給料を25倍にしてCUCに並べるのが理屈に合うだろうと。そうなると、労働者の月給は3万ほど。大学の先生の月給は6万円程度になって、シャンプーの価格や授業料から考えて、それなりに納得できる水準になるだろうと思うのですが。これができるくらいの経済力がキューバにあれば、というか、キューバがそれだけの経済力を早くつけてくれることを祈りたいです。
(2011・5・31)