日越緑の架け橋プロジェクト
≪ハザン省日越友好植林事業 概要≫
●植林プロジェクトに取り組む経緯
- ベトナムは、南シナ海に面したインドシナ半島東部に位置し、南北に細長い国で、気候は温帯から熱帯にまたがり、降水量が多く、地形も起伏に富み、この結果非常に多様な森林が分布している。
- 現在「2021年~2025年を期間とする、10億本植林プロジェクト」が地球温暖化防止や災害対策などの目的で提唱され、自然環境の維持のため国土における森林面積を42%で維持していくことが目指されている。同時に「10億本植林プロジェクト」は林業や木材加工業によるベトナム経済の活性化によってベトナム社会の発展に寄与することが期待されている。
- 1940年代以降、戦争による破壊や、戦後復興のための資材調達による過剰伐採、農地転換等により、森林が著しく減少した。1940年代頃には43%程度あった森林率が、1990年代には27%に減少していた。その後は、政府の取組、国際社会の支援等による植林により森林面積は徐々に回復し、2018年には41.65%となっている。しかし森林面積が回復する一方で、貴重な生態系を有する天然林は依然減少・劣化傾向にある。背景として、ベトナムの人口の約3割(約2,500万人)が森林などの自然資源に依存した生活を送っており、焼畑農業、開墾、燃料確保などのために行われる森林破壊が山間部において顕著なことがある。
- これまでの友好活動のカンターパートであるベトナム友好委員会連合(越日友好協会)より、協力を提案された。JVPFは奨学金支援事業及び枯葉剤被害者支援事業で友好関係の深いハザン省で植林プロジェクトをおこなうことを選択した。
- この事業は2023年が日越外交関係50周年を迎えることから、その記念事業としての意義をもっている。
●事業名称:ハザン省日越友好植林事業――事業目的と実施地の概況
- 目的要旨:このプロジェクトは、ベトナムのハザン省ハザン市のフオンドー社で実施される。近年、経済発展を意図した埋め立てや伐採の結果、森林面積が劇的に縮小し、生態系や地域の生態系に悪影響を及ぼしている。気候変動の結果として、雷雨や暴風雨などの深刻な自然災害がより頻繁に発生し、鉄砲水、浸食、地滑り、農地の質の低下などが発生している。環境を覆い保護する森林が減少しているため、ハザン省の人々の生活や財産に大きな被害を与えるだけでなく、生態環境にも悪影響を及ぼしている。
最近、人々が森林の重要性と役割を認識し始めており、森林の育成と保護は地元の人々の生活環境と経済発展のための新しい道として認識されている。ハザン省では、行政当局と住民が植林と森林被覆の促進に気づいている。しかし、資金不足のため、プロジェクトはまだゆっくりと実施されており、全体的な効果は低い段階に止まっている。
ハザンの植林プロジェクトは、ハザン当局と住民がベトナム政府の提唱した「10億本植林プロジェクト」を効果的に実施し、荒れ地と裸の丘を緑化し、環境と生態系を改善および保護し、植林と森林保護に対する人々の意識と責任を高めるのに役立っており、そして地域のアグロフォレストリー経済の発展を促進することに繋がっている。
今回の事業地の場所は、地域の保安林計画に属している。森林は、大気汚染の改善、暴風雨による被害の軽減、洪水による流失の防止、土壌侵食の回避、地下水の埋蔵量の増加、および植栽後の植栽地域周辺の生物学的生態系の回復に役立つ。よく成長する樹種アニスの選択は、地域社会に収入と経済成長をもたらしながら、森林の被覆と質を高めるために重要となる。
選ばれた樹種アニスは、ハザン省の土壌や気候条件に非常に適している。植え付けから4〜5年後、花や葉を収穫して中国や他の市場に輸出することができ、高い経済的価値をもたらす。植栽後の木々は住民に割り当てられ、責任ある保育と保護をしていく(最初の4年間は財政的支援を受ける)。住民たちの生活環境改善も見込めることから、植林とその保育と保護に魅力を感じている。このプロジェクトは地元の人々の収入の改善、飢餓の撲滅、貧困の緩和に貢献することになる。
また、日本のボランティア、ベトナム側の地域住民が参加する植林プロジェクトは、日本とベトナムの友好関係をより緊密にすることになる。 - 事業実施地の概況:ハザン省はベトナム最北端に位置する高地で国境地帯である。北は中国・雲南省と広西チワン族自治区に接し、境界線は277,556km。ベトナムで最も貧しい省の1つであり、10の郡と1つの都市、193の部落(行政最小単位)、社(区)、町があり、そのうち特別な困難を抱える127の国境の部落を含む7つの地区は国の貧しい地区に指定されている。総自然面積は7,929.48km2(森林開発を計画するための森林と土地の面積は、面積のほぼ70%)。人口は85万人を超え、そのうち90%近くが19の民族を含む少数民族である。
ベトナム北部の高山地帯に位置するハザンは、雄大な山脈があり、海抜800mから1,200mの険しい地形を持っている。ハザン省は平野や北東部から冷気が吹き込むことが多いため、特に高山地帯では一年中湿度が高く雨も多く、霰や雹の天候も多い。通常の湿度は80〜87%。年間平均気温は約21.60℃〜23.90℃。暑い季節には、絶対高温は40℃に達することもある(6月と7月)。対照的に、寒い季節の絶対低温は0℃(1月)。ドンヴァン地方などいくつかの場所は極端に下がることがある。ハザンの降雨量は非常に多く省の年間平均降雨量は約2,300〜2,400 mmで、乾季の降雨量は25mm未満である。
国連開発計画による多次元貧困指数によると、2018年までの省の貧困世帯は56,083世帯であり、31.17%を占めている。最も貧しい7つの地区では、貧困世帯の割合が最も高く44.82%を占め、特に一部の国境の部落では、貧困率は70%を超えている。貧困に近い世帯数は22,873世帯であり、省内の総世帯数の12.71%を占める。衛生的な水源を利用できない貧困世帯の数は9,527世帯を超え、貧困世帯の総数の18.05%を占めている。老朽化した家や掘立て小屋のような家に住む貧しい世帯の数は10,123世帯を超え、貧しい世帯の総数の18.05%を占める。平均住宅面積は8㎡/人未満で、9,618世帯が該当し、貧しい世帯全体の17.15%を占めている。衛生的なトイレを使用していない貧しい世帯の割合は37,921世帯(67.6%を占める)。
フオンドー社は、ハザン市の北西に位置し市内中心部から6kmの場所にある。フオンドー社の総面積は4,380.08ha、そのうち丘陵地と自然林は3,557haで81.2%、農地は480haで11%、非農地は2,58.3haで6%、未開発地は83.9haで2%、を占めている。 フオンドー社は、西から東に傾斜した高地のTay Con Linh山脈に位置し、村の地形は、2つの基本的な特徴で構成されている。中程度の山岳地帯と低い丘と谷は、村の総自然面積の40%以上を占めている。平均標高1,000mを超える高い山岳地帯のベルトエリアの面積は約60%を占めている。
フオンドー社は熱帯モンスーン気候帯に位置し、5月から10月の雨季と、11月から翌年4月の乾季の2つの異なる季節に分けられる。年間平均降雨量は約2,430mmで、年間の雨日数は約167・9日。ただし、降雨量は年間を通じて不均一に分布しており、雨季、特に7月、8月、9月に年間降水量の約75%集中する。乾季には、年間降水量の約25%で、最も雨の少ない月は12月、1月、2月。
- 事業主体:JVPF
- 助成団体:日中友好会館/日中植林・植樹国際連帯事業 第三国用
- カウンターパート:ハザン省外務局
- 事業地:ハザン省ハザン市フオンドー社
- 事業規模:一期目5ha、10,000本 二期目3.5ha、10,500本 三期目7ha、14,000本
- 樹種:一期目スターアニス、二期目シナモン、三期目(未調整)
- 事業時期:一期目2023年1月~12月 二期目2024年1月~12月 三期目2025年1月~12月
以上
JVPF会報別冊
「日越緑の架け橋」第3号.pdf(2024年6月発行)
「日越緑の架け橋」第2号.pdf(2024年1月発行)
「日越緑の架け橋」第1号.pdf(2023年6月発行)